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「社会福祉基礎構造改革(主な論点)」の若干の吟味

『ゼンコロ117号』1998年01月

 厚生省は昨年11月、介護保険法の成立を待っていたかのように、昭和26年の制定以来、その骨格を維持してきた社会福祉事業法等の抜本的見直しに若干着手することを明らかにしました。
 この見直しの基本的な方向と、主な検討項目をそれぞれ整理して提起し、いま関係諸団体の意見を聴いています。
 まず基本的な方向として(1)利用者とサービスの提供者との対等な関係の確立、(2)個人の多様な需要への総合的支援とそのための体制の構築、(3)信頼と納得が得られる良質なサービスの効率的な提供の確保、(4)多様な主体による事業への参入促進、(5)住民参加による福祉文化の土壌の形成、(6)事業運営の透明性の確保、の6項目をあげています。
 また、主な検討項目としては次の11項目があげられています。 (1)社会福祉事業、(2)措置制度、(3)サービスの質、(4)効率化、(5)施設整備、(6)社会福祉法人、(7)社会福祉協議会、ボランティア団体等、(8)共同募金、(9)人材養成・確保、(10)地域福祉計画、(11)福祉事務所、であります。
 私はこの検討項目の中で、具体的にふれられているいくつかの点を吟味してみたいと思います。
 第1の項目の(1)「社会福祉事業」については、まず、その概念を見直し、その範囲、区分、規制、助成等の基本的なあり方を検討する必要があること。また、事業には民間企業等の多様な主体の受入れ促進を検討すべきであること。地域における各種サービス間の調整や総合的な助言・相談が行える体制の検討の必要性などがあげられています。
 すなわち、社会福祉の概念、範囲、事業主体、費用などをどう整理し直すか、ということのようです。社会福祉事業法は、その第1条(目的)で、“社会福祉を目的とする法律と相まって、社会福祉事業が公明かつ適正に行われることを確保し、もって社会福祉の増進に資することを目的とする”とあり、第2条(定義)で、“「社会福祉事業」とは、第1種社会福祉事業および第2種社会福祉事業をいう”としてその範囲を具体的に明記しています。そして第22条(社会福祉法人)では、“社会福祉事業を行うことを目的として、この法律の定めるところにより設立された法人をいう”と、事業主体についても大変明快であります。
 ここをどう見直すかということは大変難しいことのように思われます。とはいうものの、成立した介護保険法や児童福祉法の改正によって、これまでの社会福祉事業の中に民間企業を含む多様な事業主体を参入させることに方針転換をしたことに伴う、制度の見直しは、これを避けて通ることはできないのであります。どこをどう見直すべきか議論が必要です。
 (2)第2の項目である「措置制度」では、“一般的に事業の効率性や創意工夫を促す誘因に欠け、利用者にとってはサービスの選択や利用しやすさの面に問題があること。事業者補助であるため透明性を欠き、これが腐敗につながる場合があること。このため行政処分によりサービスを提供する措置制度を見直して、個人自らが選択したサービスを、提供者との契約によって利用する制度を基本とする必要があること。サービスの利用に必要な費用をすべて利用者自身の負担にすることは適当ではなく、社会的連帯の考え方に基づく公的助成を行うことにより、利用者を支える仕組みが必要であること”、などの諸点があげられております。
 まず、“事業の効率性や創意工夫への誘因を欠く”云々については、さまざまな規制による事業の硬直化が主原因であると反論する人が多いと思います。措置制度だから今のような規制が必要であって、事業補助だったら規制はなくなるのかと聞きたいところです。また、“利用の選択や利用しにくさ”とはどういうことかをむしろ知りたい。現に選択するほど質をともなう量(数)があるのか。そして選択できるほど多様な量を整備する方針があるのかを問いたいと思います。さらに“事業者補助であるため透明性を欠き、腐敗につながる場合があった、”という点は意味がよくわかりません。なぜ事業者補助ならそうなのでしょうか。そうであるなら今後は利用者補助に変えるということになるのでしょうが、その内容を具体的に知りたいと思います。
 措置制度の基本的な問題点は、行政処分による事業委託であるため、利用者と施設の間に法的な関係がないというところに根本があるのではないかと思います。もうひとつは規制の多さです。
 この点に着目した制度見直しは必要だろうと思います。
 (3)「サービスの質」は“サービス提供の中心的な担い手となる専門職の位置づけと、それ以外の従事者との関係についての検討。公的基準によって質を確保すべき事項の重点化と、サービス内容の基準を定めること。サービス内容の公開や利用者の意見の反映、権利が擁護される仕組みの検討”などが提起されています。
 この点はむしろ積極的に取組むことが必要だと思います。この場合、たとえば授産施設などの処遇基準、“必要な訓練、職業を授けて自活させる”の法文を、より具体的に明確化することなども視野に入れる必要があると思います。
 (4)「効率化」については“事業者間の適正な競争を促進することを通じてサービス提供の効率性の向上を図ること。また、機械化、省力化、外部委託などの効率性向上のための方策の検討”をするとあります。
 予算の切り詰めやサービスの低下でなく、サービス向上のための効率化は、積極的に進めるべきでありましょう。ただし、競争による効率性の向上という表現は適切ではありません。
 (5)「施設整備」については、建築に要する自己負担の問題に一歩踏み込んだ提起が行われています。
 すなわち“施設整備(新設、増改築、建て替え)の際の自己負担は、施設が大規模化した今日、寄付によって償還することは事実上困難になっているから、措置制度の見直しの際に、効率的な経営が質の向上と業務の拡大につながるよう、サービスの対価としての収入を施設整備の費用に充当することを認めるなど費用調達のあり方を検討する必要があること。”と、事業補助(現措置費)の中から自己負担分の支出を認める方向での検討を示していることであります。ただし、この点についての口頭による説明では、基準となるサービス内容をクリアしていることなどの条件がつくとしています。
 施設整備のことでどうしてもふれておかなければならないことがあります。それは、必要な施設の数を地域にバランスよく整備していく責任はどこにあるのか、という点です。
 現状は、その地域に熱心な人または地域長(市町村長)がいて、土地を提供し、施設整備に必要な自己資金と、事業を行う場合の運転資金を調達して、都道府県等の承認を得て国に申請すると、国(厚生省)は予算の範囲において建築費の2分の1を交付する、という仕組みです。責任の所在がきわめてあいまいです。
 このため施設の絶対数が不足(授産施設の例をとると全市町村の3分の1以下にしか存在していない)しているうえ、地域遍在が甚だしいという姿になっています。施設整備についてはこの点を明確にすることが必要です。
 (6)「社会福祉法人」については、“福祉サービス分野への多様な主体の参入が進む中で、社会福祉法人が今後果たしていくべき役割や意義について検討する必要があるとし、設立の要件、規模のあり方についての見直し、各施設が事業ごとではなく法人単位で経営を考える必要があり、本部会計と施設会計を分離する仕組みを改めることを検討する必要があること。外部監査の導入や情報開示などへの自主的な取組みの促進、法人組織のあり方、行政による監査のあり方などの検討の必要性”を提起しています。
 社会福祉事業を民間企業等が参入して経営するようになれば、社会福祉法人の行う事業と何がちがうかが、当然問題になります。そこで社会福祉法人の要件を見直し、経営に主体性をもたせて、幅広い事業が行えるように改めたらどうか、という意図がうかがえます。現在の社会福祉法人には財政基盤は無いに等しく、施設経営を行うための付属体のような存在となっています。責任は法人にあるにもかかわらず、その力をもっていません。理事会等が形骸化し、有名無実となる主原因です。事業(施設)の数が増え、規模が大きくなるにしたがって法人の役割は重くなるのに、法人の機能は整えられず、施設長など施設職員が法人の管理機能を兼務で処理しているのが実情です。
 社会福祉法人見直しの方向はおおむね賛成であり、要件の緩和を含めて見直されることが期待されます。

 以上、平成9年11月25日付「社会福祉事業等の在り方に関する検討会」の「社会福祉の基礎構造改革について(主な論点)」にそって、論点7までを大ざっぱに吟味してみましたが、確信はありません。引き続いて勉強していきたいと思っています。

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