家族構造の変化と地域社会
『リハビリテーション』2000年01月
わが国は、急激な工業化社会への移行にともなって、人口の都市集中が進み、さらに少子高齢化の進展、女性の社会進出などによって、家族の構造や機能が大きく変貌した。これが核家族化や単身世帯の著しい増加として具象化している。ちなみに昭和30年頃まで一世帯あたりの平均人員が5人余であったものが、現在は2.8人となっている。
同時に、私たちが住む地域社会は、地域という空間はあっても、その空間の中での人間関係はほとんどないか、あるいはきわめて希薄なものでしかないという現状である。町内会などが存在していても、住民はほとんど関心を示さない。人間関係が密になったり広がったりする機能はもち得ないのである。人は人間関係の中で生きる存在であるから、どこかでそれをもっているはずであるが、それが企業(職場)であったり職域であるのだ。地域での人間関係を必要と感じないし、むしろ面倒でさえあるという意識が強くみられる。このような社会にあっては、職場や職域をもたず、あるいは失い、またはそれはあってもこの中で人間関係がつくれない人々は、たいへん孤独な場所に身を置くことになるのである。
とくに近年、宗教まがいのさまざまな組織が生れているが、それに身を寄せ、次第に深みにはまっていく人々は、このような社会的背景が生み出す現象と捉えるべきではないかと思う。世紀末現象説を唱える人もいるが、そうではなく、日本の現実の社会の中にその病理があるとみるべきだと私は思う。
ところで、なぜこんなことに言及するかといえば、私たちは、すべての障害者が、地域の中で自立した生活が送れるような社会の実現をめざして、日々運動しているからである。障害者施策の側から一面的に見て、地域社会という言葉を理想化しては誤ると思うからである。地域福祉計画だけでなく、作業所やデイセンターづくり、地域での障害者の生活を支える事業等、住民と共同で進めるなどして、地域づくりにかかわっていくべきだと思う。