社会福祉基礎構造改革「まとめ」について
『JDジャーナル』1998年12月
12月8日、中央社会福祉審議会・社会福祉基礎構造改革分科会の最終回で、その「まとめ」が行われ、公表された。この「まとめ」は、『現時点で想定される具体的な制度改革の骨格(試案)の概要を示すものであって、厚生省としての最終案ではない』ものである。したがって細部にわたる検討過程での変更があり得るとしているが、制度改革の大要は固まったといえよう。あとは社会福祉事業法の改正条文にどうまとめられるか、という段階となった。
当協議会をはじめ、関係者が憂慮する公的責任の後退の懸念について、分科会は「まとめ」の段階で改めて次のように追加意見を述べている。
『・・・関係者の間で、この改革が利用者負担の増大など公的責任の後退を招くのではないかとの懸念が少なからず表明されているが、我々のめざす改革の方向は、「中間まとめ」にもあるように国および地方公共団体には福祉を増進する責務があることを当然の前提としつつ、利用者の視点から福祉制度の再構築を行おうとするものである。この改革においては、国および地方公共団体は、それぞれの役割に応じ、利用料助成やサービス供給体制の基盤整備などを通じて国民に対する福祉サービス確保のための公的責任を果たすことになっており、・・・(後略)』
「まとめ」の内容は、(1)利用者の立場に立った福祉制度の構築、(2)社会福祉事業の推進、(3)人材の養成・確保、(4)地域福祉の充実、の4項目から成っており、各項ごとに細目が立てられている。(1)の細目は、ア)サービスの利用制度であり、措置制度から契約による利用制度への転換、イ)利用者保護の仕組みとして、地域福祉権利擁護制度の創設、苦情解決の仕組みを、それぞれ整備すること、ウ)サービスの質の確保、エ)情報開示・提供体制の整備をする、としている。(2)以下の内容は省略するが、全体をみての印象は、基礎構造改革というには、深さも 広さも足りないという感じである。
障害者の分野でいえば、選択とか対等性を保障するための、社会資源の充足計画が示されていないこと。これと深くかかわる小規模作業所に対する方策があいまいであること。より本質的には、『核家族化の進行、少子・高齢化社会の到来』という、この改革の前提にそった改革になっているとは思えないことである。
わが国の障害者施策がこの時代にいまだに親(家族)がかりのレベルにあること。その原因はなにか。したがってどのような政策や制度が必要であるか。障害者の真の権利擁護はこうした点に切り込んでこそ、障害者分野の基礎構造改革といえると思う。不徹底の感はぬぐえない。