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道を開く構造改革を

『JDジャーナル』1998年08月

 昨年11月に発表された「社会福祉の基礎構造改革について(主要な論点)」では、たとえば措置制度の項で、「サービスの利用に必要な費用を全て利用者負担とすることは適当でなく、社会連帯の考え方に基づく公的助成を行うことにより、利用者を支える仕組みが必要である。」さらに「この助成は、介護保険の考え方のように利用者に提供されるサービスに着目したものとする必要がある」と書かれている。
 この文脈は、これまでの、まず公費があり、その一部を利用者の応能負担とした制度を逆転させて、まず利用者負担があり、その次に公費出動があるという仕組みに変える方向を示唆するものとして、措置制度のもつ弱点以上に重大な問題として受け止められた。これは政府の財政構造改革の福祉版と映ったのである。
 また、公的助成という表現も適切ではない。福祉は本来国や地方公共団体の公的責任において行うものであって、誰かが行う事業を国や地方行政が助成するという性質のものではないからである。そして政治への信頼が極端に弱まっている中で、次善の策として制度化された介護保険の考え方が強調されているのも理解しがたい。
 このように、最初に出された「主要な論点」には、全体として納得できない基調があった。だが、この6月に出された「中間まとめ」は、30余の民間団体との2回にわたるヒアリングや、中央社会福祉審議会・社会福祉構造改革分科会の会議を重ねて、かなり前向きに整理され、改められている。
 戦後50余年が経ち、社会・経済構造全般の変革期に直面していること、少子・高齢化、家族形態や機能の大きい変化など、福祉全体を基礎構造から見直す必要性は否定できない。この際、何が問題かを的確に捉え、「全ての人々の社会」の実現に向けて、福祉の基本構造をつくることが求められている。
 障害分野では、対等、選択、契約といっても、市町村の約60%に利用できる施設が存在していないことや、地域で自立生活をするための所得保障制度も未整備のままである。ことに精神障害者の福祉施策はきわめて立ち後れており、まだ社会復帰施策のレベルである。
 今回の構造改革は、こうした実態を置き去りにしないだけでなく、21世紀の展望を開く内容となることをめざすべきである。

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