「今後の障害者保健福祉施策の在り方について」の中間報告を見る
『JDジャーナル』1998年03月
昨年12月に発表されたこの報告は、(1)検討の視点、(2)基本的理念、(3)基本的な施策の方向、(4)具体的な施策の方向、の4点に整理し、A4判33頁にわたってまとめられている。これをわずかな字数で論じることはむずかしい。したがってここでは基本的なことにのみふれることとする。
障害者プランはその基本を、「地域における自立の支援」としており、そのために障害種別毎の施策を総合化することや、市町村を中心に障害保健福祉圏域(複数市町村域)、都道府県域のそれぞれの役割分担が整理され、厚生省の障害保健福祉部の新設とあいまって、行政の施策推進体制が明確にされている。しかし、障害児、精神薄弱者の福祉サービスの決定権限の市町村への移譲については明記されているが、精神障害者については、市町村における対応の強化という表現に留めており、市町村への権限移譲についてはやや慎重な姿勢をとっている。この点はもう少し踏み込むべきではないかと思う。
重度身障者や知的障害者あるいは精神障害者が地域で自立生活をするための介護の問題について、全体として具体性に乏しいことや、“高齢者のサービスと比較して遜色のないように”という表現が使われていることは気になるところである。障害の種別や程度に対応し、自立した生活を実現するための適切な介護内容と体制をどうつくるか、ということであってほしい。
施設体系については、かなり突っ込んだ検討が行われたようであるが、まだ両論あるいは各論併記の段階のようである。その中で授産施設や精神薄弱者更生援護施設のあり方等については、かなり前向きの整理が行われている。ただ、精神障害者について、介護機能のついた施設形態を研究すべきだとしていることや、“長期入院患者のうち、当面は社会復帰が望めず、引き続いて入院治療が必要な者に対しては、医療の保障された生活の場を提供するための施設のあり方について検討すべき”という部分は、表現は別にしてもかなり問題がある。精神障害者の重度という場合はおそらく病院での対応となるはずで、身体障害者や知的障害者のように、介護つきの生活施設ということにはならないと思う。その他、地域生活の基本となる所得保障について、ほとんどふれられていないことは、この報告の致命的ともいえる問題点である。