障害者運動、その力量を高めよう
『JDジャーナル』2001年03月
構造改革にともなう障害者(身体障害者・知的障害者)の居宅生活および施設利用の支援費に関する規定が法に明記されました。その中で、利用者負担については「身体障害者又はその扶養義務者(民法(明治29年律第89号)に定める扶養義務者をいう。以下同じ。)の負担能力に応じ、厚生労働大臣が定める基準を超えない範囲内において市町村長が定める基準により算定した額」(身体障害者福祉法第17条の4および第17条の10)。知的障害者についても知的障害者福祉法第15条の5および第15条の11に同じように規定されております。皆さんはすでにご承知でしょう。
現在の障害者福祉サービスに対する利用料徴収の制度が始まるときから、深く関わってきた立場からみると、この規定は大変重い意味をもっています。利用料を障害者本人の所得に限定せず、扶養義務者の所得も加えることは、今日の障害者施策の基本理念に反するからです。
当会は、障害者基本法でいう個人としての尊厳を重んじること、その人なりの自立した生活を実現していくことが、障害者福祉の基本テーマであるとし、その認識にそって国際障害者年以来、運動に取り組んでいますが、この運動と事業の中で、とくに大きいバリアは、わが国の古い家族制度であり、まさに「明治29年法律第89号」にあることを繰り返して指摘し、見直しを求め続けていることはご承知のとおりです。
これを自立・選択・対等性などの理念を掲げながら、2つの障害者福祉法の中に明記したことは、きわめて重大であります。
問題は、私たちがこれを簡単に許してしまったことであり、力不足を露呈したものと認識すべきです。
国全体がかつてのような直接行動に訴える大衆行動が激減しており、障害者分野の運動もそういう流れの中にあります。最近の障害者分野の特徴は、分権時代を反映して、地域における多様な活動に比重が移っているといえるように思います。小規模作業所の5,500カ所以上という数は、そのひとつの典型でしょう。IL運動、グループホームや生活寮づくり等々、多分に運動的性格をもっています。
こうした地域での地道で生活に密着した運動と事業が太い幹となって、いずれは力を発揮するようになることが期待されます。
しかし、社会保障制度の全面的な見直しという現実の政治課題の中で、障害者分野は、将来の展望、方向について広く論議しつつ対応していかなければなりません。若い力が必要です。
全体を見つめ、冷静に判断し、どこに力の源泉があるか、その鉱脈を発見して、運動を再構築していくこと、これが現在の課題であります。