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介護保険と障害者介護

『JDジャーナル』2000年11月

 介護保険の実施で、所得の低い人々が苦しんでいます。これは当初から想定できたことで、応益負担の原則からは必然的に発生する欠点であります。しかも保険というのは保険料負担があり、保険でみる範囲が定められるなどの足切りがあります。さらに健康保険で先例がつくられた自己負担が当然のように実施されることになりました。
 わが国の現在の家族制度のもとでは、家族介護を中心とするというのは、制度上は整合性があるということになりましょう。しかし、現実は、国の家族制度とは大きく乖離し、家族の扶養能力が著しく低下したため、家族介護を続けることができなくなり、いわゆる社会的介護への転換、すなわち介護保険法制定となったことは、広く認識されているとおりであります。
 しかし、その原則に応益負担が採用され、保険料や利用料の1割負担が制度化され、しかも介護サービスの範囲が限定されるなどの制度となったため、法制定前よりは、その内容が後退し、サービスは薄く、かつ狭くなっています。その中で、当然のように所得の低い人々は、この制度を利用することが困難という事態が起こっており、ここをどう改善するかが大きな課題となっています。また、長く暮らした住居で暮らし続けたいという願いがかなえられるようにすることも、基本的に重要です。
 以上は、介護保険法の実施後の報道や現場の声を見聞しての感想です。
 最近、障害者の介護について、実施5年後の見直しのとき、介護保険の全面的な適用を望むか、という当事者への質問に対しては、ほとんどの人から「望まない」という答が返ってきます。その理由は、述べたような問題点を知ってのことであると思います。
 介護保険創設の検討が行われる過程で、障害者介護をどう扱うかという議論があって、当会の代表としての私にも公式・非公式に意見を求められたことがあり、たとえば“重度障害者や知的障害者、または精神障害者等が地域で自立生活をするとき、家事労働の支援は不可欠であるが、これを保険の対象にできるか”とか“介護を受けながら積極的に社会参加をすることが大切だが、そのための多様な介護サービスは可能か”などの提起をしましたが、その結果は、保険ではむずかしいとして高齢者に限定する制度とした経緯があります。この問題もそろそろ議論しはじめなければなりません。

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