■障害のある人の在宅就労を考える
トライアングル

機関紙『トライアングル』は三菱商事株式会社様のご協力により発行しております。

Vol.71 
CONTENTS 2019.07(令和元年)

Topic! 令和元年版 障害者白書に思う
-バランスの取れたICT支援策を

 この6月、内閣府より「令和元年版 障害者白書」が出ており、現在内閣府のサイトで全文を読むことができます(刊行物は8月以降)。写真や表も多用され、平成30年度の障害者施策の概況を客観的に把握するにはわかりやすい読み物です。 国の障害者雇用不適切計上のくだりなど興味深く目を通しておりましたところ、驚いたのは全く別の視点で、“なんとICTを活用した施策関連が多いのか”ということです。

 下の表1は白書の概要版にあるTOPICS一覧です。

白書の概要版にあるTOPICS一覧
表1.令和元年版障害者白書 <概要>TOPICS

 ICTによる支援が関わっている項目に下線を引いてみると、表1にあるように40項目の中で少なくとも約半分くらいがそうでした。

 しかし、それにしては、障害のある方のIT機器の個別利用を支える策に目立った改善はありません。支援機器購入額の給付は地域差が大きく、また、利用者にあったカスタマイズや使い方サポートのしくみなどは、未だ多くの自治体が自己責任です。

 東京都障害者IT地域支援センターを運営する当法人としては、省庁の壁を越えた、令和に相応しいしくみづくりに協力したいと願っております。

(堀込)

障害のある人の在宅就労事例
「テレビの番組作りを在宅で後方支援。
SNSウォッチは任せて下さい」

渡 恵美子さん (関節リウマチ1種1級)

株式会社TBSテレビ
制作局 制作考査部
基本情報(取材:2019年7月)
所属 (株)TBSテレビ 制作局 制作考査部
就労開始時期 2018年2月
就労形態 在宅勤務
就労時間 月曜日~金曜日 9:00~16:00
就労内容 番組についてのSNSレポート業務
打ち合わせ メール、電話、出社
PCの支援機器 スクリーンキーボード、外付けテンキー
渡恵美子さん
写真:自室ベッドで就労。「ピカチュウ他局でアウトかも(笑)」

 当法人の「IT技術者在宅養成講座」の15期生、渡恵美子さんの登場です。昨年転職されて現在のお仕事に。10年前にはなかった、今どきのオシゴトのお話をどうぞお楽しみください!。

Q.テレビ局勤務とのこと、業務を教えて下さい。

 一言でいうと「SNSつぶやきレポート」です。主にツイッターなどでつぶやかれた弊社の番組への感想について、自分の感想も交えレポートするものです。ポジティブなもの、ネガティブなもの、ホットな話題の他、関するツイートが多い演者さんや、同時間帯の他局と比較してのつぶやきなど、興味深いものを取り上げます。

Q.なるほど。さて、これがどう役立つのでしょう。

 番組を作る側にとってはとても大切な情報です。ネガティブな意見を改善の材料にするのは当然として、ポジティブな感想が多い企画は予定よりもそれを長く継続させるなど、レポート内容はしっかり参考にしてもらえます。制作の現場には、ディレクター、プロデューサー、AD、APなど本当に多くの人がかかわっていますが、わたしたち在宅社員も少しでも番組作りに貢献できれば、と思っています。

Q.上司や同僚の方とのコミュニケーションは?

 メールや電話ですね。上司はレポートの確認や感想をきっちり伝えてくれますし、必要な時にはスタジオ見学や、出社による研修もあります。多忙な現場ですが、出社の機会には、現場スタッフとコミュニケーションできるよう手配いただいたり。ありがたいですね。後輩とはLINEで、仕事のことだけでなくテレビ談義も盛り上がります。

Q.出社研修は例えばどのようなものでしょう。

 先日は、マーケティング部、コンテンツ推進部の方からSNSの解析ツールの研修を受けました。人気のドラマになりますとツイッターの数も何万!になり、傾向を把握するのも大変です。解析ツールを使うとそれが10分の1の数になり、口コミの多い単語やチェックすべき項目の手掛かりがわかります。

Q.このような研修が、この業務の専門性を高めていくのですね

 そうですね。でも専門性というのかどうかわかりませんが、大切なことは「自分が楽しむこと」と思っています。常々上司 は 「楽しんで 」と言います。楽しむことが良い仕事をする秘訣なのだそうです。好奇心を持って自分が楽しめなければ、「面白いか」「面白くないか」を感じとる最も大事な力につながらないと、1年半でやっとわかってきたように思います。

Q.今後の課題や目標はおありですか。

 現在は、日中に福祉利用をする日は、その時間の分をシフトし勤務記録につけています。今後も十分な体調管理で生活との両立に気を配り、業務を継続していきたいと思っています。「このつぶやきは貴重かも」って判断するのは、これから先もAIではないと感じています。

Q.最後に、テレワークを目指す皆様になにか一言をお願いいたします。

 在宅での単独作業においてネガティブな気持ちが発生した時は、自分の切り替え次第です。どんな小さい作業でも目標は持てます。例えば「何時までにこれを終える」のように。そこをクリアすることを楽しみにもできますね。わたしは今の仕事になってから、「楽しんでスイッチ」を初めて知りました。どうやったらそれを押せるかも(笑)。上司と仕事のおかげです。(終)

(取材:堀込)

過去のSNSレポートの一例
図:過去のSNSレポートの一例

ITパスポート試験・基本情報技術者試験における出題内容見直し

 IT技術者在宅養成講座では、1年次に「ITパスポート試験」、2年次(プログラマコースのみ)に「基本情報技術者試験」を受験するようカリキュラムを組んでいます。前者はITに関する基礎知識を評価する試験であり、後者はITに関する基本的な知識・技能を評価する試験です。どちらも経済産業省認定の国家資格で、合格することで情報処理に関する一定の技術や知識を有することを証明する資格であるといえるでしょう。

 「IT技術や知識の向上に繋がる」、「就職に有利になる」など利点も多く、これまで数多くの受講生が試験に挑戦してきました。障害のために学習時間確保が難しい、学習方法が限定される、特別措置の配慮無しに受験できないなど不利な条件下で合格を勝ち取ることは、単なる資格取得だけでなく受講生にとって成功体験になり大きな自信に繋がります。

 これら2つの試験ですが、昨年閣議決定された「未来投資戦略2018」を踏まえて大幅に出題内容が改定される運びとなりました。順に内容を説明します。

◆ITパスポート試験の改定

 昨年2018年8月、試験主催元である独立行政法人情報処理推進機構(以下、IPA)が出題内容変更のプレス発表を行いました。

 見直し内容は「AI、ビッグデータ、IoTなど新技術の利活用や新技術を構成する技術要素に関連する出題を強化」すること。適用開始となる2019年4月より半年後を目途にこれら新技術に関する出題割合を半分まで高めていくとあります。

 「未来投資戦略2018」では、「ITリテラシーを認定するためのITパスポート試験を拡充する」と明記されており、試験内容の改定と受験者数の増加に伴い、社会全体のITリテラシー向上に大きく寄与することが期待されています。 

◆基本情報技術者試験の改定

 基本情報技術者試験における出題見直し実施は、やや遅れて本年2019年1月にIPAにより発表されました。こちらの見直し内容は「プログラム言語の見直し、プログラミング能力、理数能力等に関する問題を強化」すること。2019年秋期試験から適用されるとあります。「未来投資戦略2018」では試験名は明記されていませんが、この中でプログラミング能力及び理数能力の重要性が示されたこと、AI人材の育成ニーズが求められていることから改定に至った模様です。

 ITエンジニアの登竜門といえる基本情報技術者試験でこれまで以上に技術要素が強まったことは、今後のAI時代を見据えたものといえます。

 政府が閣議決定した方針に基づき試験内容が見直しされたように、社会から求められる人材の基準も従来と変わりつつあります。在宅養成講座でも、これら社会的背景や最新の技術動向に常に目を向け、その時代に即した技術や知識を受講生に伝授し、就労に結び付けてきたいと考えています。

(受川)

シリーズ第33回 東京都障害者IT地域支援センターだより
― 新しいサービスやアプリでより便利な生活を
「遠隔援護とタグづけアプリ!」

 平成の終わりから令和にかけて、息つく間もなく新しいサービスやアプリが目白押し。新しい技術をちょっと皆さまにもお知らせしたいと思います。

① 『遠隔援護サービス』聞いたことありますか?

 ICTを活用した新しい遠隔支援の形です。身体に装着する小型カメラと、スマホによる双方向の音声通話を利用し、晴眼者が遠隔地から、視覚障害の方の行動をサポートします。

 例えば、
 「この牛乳、賞味期限はどうなってる?」
 「この手紙の宛名を読んでくれる?」
 「靴下は右と左でちゃんと合ってる?」
 など日常のちょっとした問いに、ネットの向こうの人がカメラ越しに即座に答えてくれます。

 このサービスがあれば、すぐに解決できることが日々たくさんあるのではないでしょうか?

支援機器
② 新しい『タグ』付けアプリです。

 シールやボタンなど様々なタイプのタグにiPhoneをかざして声を登録します。そのタグにiPhoneをかざすと・・。タグに登録したその音声を、ボイスオーバーがすぐに再生してくれます。

 これまでのICタグツールと違い、登録情報はサーバーにアップするかしないかを選べます。パスワードなど人に知られたくないものは、アップしない方を選択。反対に、本人以外の人もその人のiPhoneで聞くことが出来るようにするにはサーバーにアップする方を選択。使いわけが出来るのです。

 音声情報だけではなくテキストデータも登録できるので使い方は無限大!。専用アプリ(無料)は、iPhone7以降で使えます。

 お試しの際は、ご予約のうえご来館下さい。

支援機器

●お問い合わせ先
電話 03-6682-6308  FAX 03-6686-1277

おめでとう

就職おめでとう

独立行政法人 情報処理推進機構 様
在宅雇用決定!

K.Mさん 障害者手帳1種2級
(IT技術者在宅養成講座 31期生)

おめでとう

資格取得おめでとう

Excel 2013 MOSスペシャリスト
合格

Y.Aさん 障害者手帳1種1級
(IT技術者在宅養成講座 受講中)

おめでとう

編 集 後 記

 人生の大先輩の言葉「私にとって人生とは、出会いと選択と体験を重ねて自分をつくること」が、最近胸に染み入ります。コミュニケーション機器を通して温かいメッセージをくださる方。遠いセンターまで足を運び、笑顔をくださる方。拙い仕事を見守ってくださる方。この出会いに支えられて今があります。

 先日、IT支援者養成研修でトーキングエイドを使ってご講話くださったIさん。「来年もまた会えるかな!?」に、「いいとも!」。再会を楽しみにお待ちしています。

(今津)