Vol.67
CONTENTS 2018.03(平成30年)
先号の当誌面に、昨年わたくしども職能開発室が、8団体からなる「障がいのある方の全国テレワーク推進ネットワーク」(全障テレネット※1)の一員として、ヘルパー制度の見直しを求め、厚生労働省に要望書を提出したことをご報告いたしました。
(ヘルパー制度の見直し:現在は在宅で働いている時間は収入があるとして基本的に訪問介護サービスを利用できず、就労継続支援A型、B型などの就労系サービスを在宅で利用する際も、サービス併給になるとして介護サービス利用が認められていない。)
要望書も功を奏したのか、この2月に出た障害福祉サービス報酬改定では、就労移行支援又は就労継続支援を在宅で受けている方のヘルパー代の一部加算(300単位/日)が新設されました。額としては厳しいものではありますが、「在宅利用が促進されない可能性があることから、在宅利用を促進するための加算を創設する」と文面に明記されている点で、このことの重要性と必要性が公に認められたということ。まずは一歩だと考えます。
また、離島等において就労系サービスを在宅利用する時の要件についても、職員による週1回の訪問がICT機器を活用しての評価も可能となるなど、条件の緩和が見られます。
今後もじわじわと現実に即した制度となり、「労働か福祉か」の二者択一ではなく、「労働も福祉も」に舵がきられていくことを希望します
「労働も福祉も」というところでは、雇用と福祉の施策を一体的に立案・展開できる体制づくりを目指す「インクルーシブ雇用議連」(「障害者の安定雇用・安心就労をめざす議員連盟」)が、2月27日超党派で設立されました。これも重要な働き方改革と言えるでしょう。
「重い障害があっても能力を生かして働ける社会、ディーセントワーク」への扉でありますよう。
(堀込)
※ 全障テレネット |
松村ほがらさん
(脊髄性筋萎縮症1種1級)
社会福祉法人東京コロニー 青葉ワークセンター
(就労継続支援B型 在宅就労)
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2012年に就労支援サービスにおいても在宅利用が認められるようになりました。とはいえ、まだまだ事例が少ないのが現実。
今号は、支援機器を駆使して、在宅でIT作業
(B型就労)に励む松村ほがらさんの登場です。
私の病気は脊髄性筋萎縮症です。手、足が動かせなくて、気管切開をして人工呼吸器を付けています。わずかに動かせる指先を使ってスイッチを押して、パソコンや、会話用のレッツチャットを操作しています。趣味はアイドルのブルーレイやYou Tubeを見たりライブに行くことです。
私は、特別支援学校の高等部を一昨年の3月に卒業しました。もともとパソコンは得意でしたが、学校で更に腕を磨きました。そして、進路担当の先生にコロニー青葉ワークセンターを教えてもらい実習をしました。始めはもちろん不安もありましたが、実習していくうちに私にあいそうな仕事だと思い、一昨年の4月から就労を始めました。
作業内容は、事業所のお金の計算をエクセルでやったり、今年から後輩が入ったので、後輩の作業のチェックをやります。
火曜日木曜日の10時から12時に在宅で作業をしています。事業所の担当者とメールでエクセルの作業ファイルをやり取りし、仕事が終わったら毎回報告メールをします。毎週火曜日は事業所の方が来てくれるので、わからないことがあれば確認します。また、月に1回事業所に出向きます。
月曜日は東京小児のPTに行って体をほぐし、火曜と木曜は仕事、水曜と金曜は市の障害者センターに行きます。そこでもパソコンで頼まれた資料を作ることもありますよ。また、木曜は仕事の後、津田塾大学の公開講座にも行ってます。夕方は、訪問看護、ヘルパーさんと入浴、排痰があります。
土日は入浴サービスの大きい湯船に入ってゆったりしたり、家族とお出かけしたり、自由時間にして過ごしていますね。
パソコンの入力がうまくできた時です。それから、年に数回の事業所のイベントです。例えば、暑気払い、忘年会、日帰り旅行があります。その中で私が特に楽しかったのはバス旅行です。なぜなら事業所の皆さんと一緒にお出かけできるから。また、自分で稼いだ給料を使い、アイドルのブルーレイ、ファンクラブ代、スカパー代を払えることですね!。
大切なことは、間違わないで作業をやること。
私のこれからの課題はいかに効率よく作業が出来るか考えることです。今は、エクセルのグラフ作りを担当の方に教わりながらやっています。
仕事はパソコン中心なので、学校時代からパソコンの練習をしておくと良いと思います。私は、高等部時代には、校内実習でパソコンで資料をつくったり、社会のレポートをパソコンで提出したりしました。数検では、どうやってパソコンで筆算を書くか考えたりもしました。それらが、いろんなところで役に立っているなあと思っています。
(聞き手:堀込)
松村さんの利用している情報支援機器 | |
『IT技術者在宅養成講座』では、2年間の学習の集大成として「グループワーク」という学習科目を設けています。在宅就労を意識した模擬的な形式で実施され、クライアントから提示された案件に対し、講習生たちが互いに協力しながら取り組んでいくスタイルをとっています。
本年度は、アクセシビリティに配慮したwebサイト制作をテーマとしました。既存のwebサイトに、文字・色・形、音声読み上げ、操作性などを考慮したコンテンツを追加していきます。
普段、講習生たちは、在宅で自身の障害特性やそれに応じた情報技術を用い、個別に学習しています。他の講習生と接する機会があまりないため、共同作業はとても難しく感じているでしょう。講習期間中、共同作業の学習科目を設けていますが、皆さん毎回苦労されています。
毎年さまざまなトラブルが発生するグループワークですが、本年はスタート時点から波乱の幕開けでした。もともと休学や就職によって参加できないメンバーもおり、講習生2名によってグループワークがはじまりましたが、開始翌日に1名が急きょ3週間の入院。一時的に1名のみで制作に取り組む事態に。この緊急事態に、養成講座満了前に就職が決まった講習生が、休日のみという条件で参加し、なんとかクライアントの要望に沿ったwebサイトを制作することができました。誰かが困ったときに助け合う、34期生の絆の深さを感じます。
在宅就労に限らず、現実社会では自身あるいは同僚が体調を崩して作業が滞ることが今後もあるでしょう。不測の事態にどのように対応し、クライアントからの依頼を全うするか。深く考える良い機会になったかと思います。
(受川)
当センターでは東京都の障害者IT支援総合基盤整備事業に基づき、関連機関との連携を図り、円滑な運営につなげることを目標としたIT支援関係機関連絡会(交流会)を毎年開催しており、今年も2月の最終日に実施いたしました。
冒頭は話題の新製品紹介として点字ウォッチ「Dot Watch」のデモンストレーションが行われました。視覚障害者向けのスマートウォッチとしてBluetooth でスマートフォンと繋がり、流れる点字ディスプレイでSNSが受信できること、緊急時や騒がしい環境でも情報が確実に伝えられる点などが大きな特徴です。
日本語点字に対応したものは現在開発中、正式販売される日も近いとのこと。参加者の皆さまも浮き出る点字ディスプレイを触りながら、関心を持ってお話を聞いていらっしゃいました。
ITの日々の変化の中、個人に合った支援の在り方は共通の関心事としてあり、交流会では各機関の取り組みや課題、ご苦労されている点など、お互いにヒントや事例を共有し、例え業務の内容が異なっていても共通項となる貴重な情報交換の場となりました。
こうしたざっくばらんな交流や意見交換で、都内のIT支援の充実をさらに協力して図っていければと願っております。
(加来)
●お問い合わせ先
東京都障害者IT地域支援センター
〒112-0006 文京区小日向4-1-6
電話 03-6682-6308 FAX 03-6686-1277
Facebookページ
https://www.facebook.com/tokyoitcenter
このトライアングルの誌面も、暖かい励ましメールや労働分野のアドバイスなどで、常にさりげなく道を照らして下さいました。謹んでお悔やみ申し上げます。
▼職能開発室作成のガイドブックにいただいた寄稿(2009)
http://www.es-team.net/topics/06.html
資格取得おめでとう |
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IT パスポート 合格 |
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F.Y さん 障害者手帳1種1級 |
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就職おめでとう |
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富士製薬工業株式会社にて在宅勤務決定 |
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K.T さん 障害者手帳1種1級 |
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「障害者委託訓練」という制度はご存知でしょうか?。公益財団法人東京しごと財団がハローワークと連携して実施する障害のある方のための多様な職業訓練で、民間も含め様々な団体が受託実施いたします。
東京コロニー職能開発室でも本年4 月開講予定、講座名は「HTML5 で初めて作るスマートフォンアプリ」です。 一見難しそうに見えますが自身のペースにあわせて基礎から訓練実施していきます。委託訓練の詳細については東京しごと財団までお問い合わせください。(受川)
東京しごと財団 <http://www.shigotozaidan.or.jp/shkn/>