トライアングルの目次へ東京コロニー・職能開発室のトップへ
■重度身体障害者の在宅就労を考える
トライアングル
機関紙『トライアングル』は三菱商事株式会社様のご協力により発行しております。

Vol.45 
CONTENTS 2008.11(平成20年)

■WI世界会議 in 札幌 に参加して

■障害のある方の在宅勤務事例

■SOHOグループ「es-team」のデザイナーたちが活躍中!
  『第7回キラキラっとアートコンクール』

■シリーズ第10回サポートセンター便り 「5年目を迎えるITサポートセンターについて」

■「智恵の和」活動報告 〜Ruby もやってます!

■おめでとう

 ワーカビリティ・インターナショナル(Workability International:以下WI)は、障害者に対する就労サービス提供者の世界最大のNGOで、33か国において117団体が加盟し、350万人の障害者に就労プログラムを20年間提供しています。

 去る9月9日から3日間、そのWIジャパンの主催により、札幌において世界会議が開催されました。アジア各国から参加者を招待し、社会保障問題や企業との連携について研究・検討が熱く繰り広げられましたが、中でも就労・雇用の世界規準に関するセミナーでは、ILO障害者専門官や、様々な地域のパネリストによって「ディーセントワークの理念」が語られました。これは、一言でいうと人間らしい仕事を意味し、適切な収入とやりがいがあって家族と共に尊厳のある暮らしと働き方が保障されなければならないという考え方で、ここ数年、若年雇用の課題として日本でも耳にすることが多くなったキーワードです。当たり前であって当たり前でなかったこのことが、今まさに世界的に確保されるべき共通課題だと実感でき、会場は大事な一つの物差しを得たように思われました。

* * *

 我々支援者はとかく「働くステージへ」という思いが先んじて、雇用条件や労働環境など納得のいく整理ができていない状況でスタートしてしまうことが時にあります。また、それが結果として、就労の「質」よりも「量」が求められる現状に沿ってしまったこともあったのではないでしょうか。

 こうした学びを持った上で振り返ると、手法やノウハウもさることながら、改めて労働の本質的な意味を問うことの大切さを痛切に実感いたします。

(堀込)

WI世界会議 in 札幌
WI世界会議 in 札幌

ワーカビリティ・インターナショナル (Workability International)

ページTOPへ

渡辺 光明さん  (40代)
(頚椎損傷 1種1級)
(IT技術者在宅養成講座1998年修了)

NTTクラルティ株式会社 
メディア開発部所属 WEB担当

入社時期
2007年7月
雇用形態
契約社員
勤務時間
9:00〜16:45
就労場所
自宅
労務管理
毎日の開始と終了時のメール
出  社
ほぼ1ヶ月に1度
仕事内容
他社及び自社のWEB制作


 今回登場の渡辺さんは、ある意味、在宅就労のエキスパート。NTTクラルティ様に入社してからは1年3ヶ月ですが、それ以前に長いSOHO経験をお持ちです。(SOHO時代のお仕事風景は「トライアングルVol.31」をご覧ください)SOHOと雇用の違いなども含めて、今の勤務についてうかがってまいりました。

 

Q:1年経過しましたね〜、現在のお仕事内容をお願いします。

 Dreamweaverというソフトを使って、自社及び他社のWEBを制作しています(この日は封切前の邦画のページを製作されてました)。まだまだ勉強することだらけですよ。うちの会社としてはアクセシビリティの充実も売りの一つですから、このあたりもっともっと強くなりたいですね。

Q:SOHOが長かった渡辺さんですが、フリーで働いておられた時との大きな違いは何でしょう。

 まあどちらも同じ在宅での作業ですが、時間の使い方が大きく違います。SOHOの時は主体的に自分で全て管理しますでしょ、雇用の場合は制約があるのが基本。そういう意味では雇用になってからは若干のストレスがあるかな。ただ、作業の面では、雇用はコーディネーターがいてセッティングしてくれますから、自分は制作に専念できます。わたしは、コツコツ作業するほうが好きなので、今のほうが気に入っています。

Q:コーディネーターさんとはどのようにやり取りなさるのでしょう。

 メール、電話、あと会社のパソコンに入ってメッセンジャーなどで会話します。

 コーディネーターが作業量など気を使ってくれるので、苦痛になるほどの仕事の繁閑は起きません。 また月1ペースで出社して打ち合わせをするのも社内の状況の理解につながります。グループでお昼を食べたりも楽しいですしね、ほとんど男性ですが(笑)。

Q:ではコミュニケーションはバッチリですか。

 うーん、これは自分の課題でもあるのですが、時々軽い「外様感」はあるかなぁ。

 例えば、こちらで作成して送ったHTMLが会社で変更されてWEBにアップされている時など、どこを修正してもらったのか、箇所を指摘してほしいなぁと思う時があります。もちろん、コーディネーターも忙しいので、逐一でなく、あとでまとめてでもよいのですが。

 在宅の環境なので、会社での作業プロセスが逐一見えるわけではない。そこは割り切りも必要だと思うと同時に、どうしても聞きたい時は教えてもらう努力を自分もしなければと思っています。在宅勤務は何事も積極的にいかないといかんすね(笑)。

Q:モチベーションを上げる努力は、勤務者、事業所、双方で心がけるということですね。さて、最後になりましたが、恒例の、あとに続く人へのアドバイスをお願いいたします!

 ともかく「体が資本!」「自己管理が要!」。フリーランスの時は時間に融通が聞くのでストレス溜まらないように色々できましたが、雇用になるとそうはいきません。自分で努めて体を動かすなどしないとね。あと、勉強はITだけではありませんよ。例えば美術館にかかってる展覧会で色使いを参考にするなど、幅広くね。

 

NTTクラルティ様が運営するポータルサイト「ゆうゆうゆう」
NTTクラルティ様が運営するポータルサイト 
「ゆうゆうゆう」


インタビューを終えて:

 取材の間中、ご自分の仕事を「技術的に中途半端」「センスがない」など、厳しく採点しておられた渡辺さん。「“見出し目立つようにして”というオーダーにさえ満足に答えられないんですよ」と悔しそう。そのご自身への厳しさは、在宅勤務で何より大切な“信頼”に、先々でつながっていくことでしょう。近いうちに美術館、ご一緒しましょう!

(堀込)

↑ページTOPへ
「キラキラっとアートコンクール」のポスター
ポスター

 障害のある子どもたちの絵画を世に広め、未来のアーティストを支援するイベント「キラキラっとアートコンクール」(主催 三菱地所、協力 東京コロニー・アートビリティ)が、今年で7年目を迎えます。これまでに延べ5千点に及ぶ作品が集まり、その後プロのアーティストとして活躍している方を数多く輩出している、学校関係者や子どもたちにもすっかりおなじみとなったコンクールです。

 今年はその開催にあたり使用する広告・告知媒体一式の企画・デザインを、es-teamが手がけることとなり、今年1月に職能開発室で行われた「短期グラフィック・デザイン講座」の修了生(es-teamメンバー)と講師、そしてアートビリティのスタッフが手を組んで、この企画コンペに臨みました。修了生たちは、これまでのコンクールの歴史や主旨を調べ、講師に何度も相談。プレゼンも自らが行うなど万全の準備で臨んだところ、その努力が結実し、イベントに使用するポスターやチラシ、ノベルティグッズ、原画展の開催案内、主催者の名刺やDMなどのデザインや制作業務を一手に受注するという快挙を遂げることができました。

 次々と来る注文やご要望に奮戦の続く日々ですが、出来上がったポスターなどは子どもたちの個性豊かな作品とコンクールの主旨が存分に表現されており、文字どおり「子どもたちの『キラキラ』が凝縮されたデザイン」との評価を得ています。

 今回の仕事では、デザイナーが作品を創るプロセスにおいて、足りないコンテンツを補ったり、既存のイラストを自分のデザインに組み込むことにより、障害のあるアーティストとデザイナー、それぞれの強みが相乗的に効果を出し、仕事のチャンスにつながったという点でとても大きな成果があったと思われます。今後もこうしたチャンスを生みだし、力の発揮できる場を見つけていきたいと思います。

(吉田)


ノベルティグッズ(絆創膏)

■関連サイト
キラキラっとアートコンクール

es-team(エス・チーム) 
「ワーカーの素顔」に、デザイン講座のようすを紹介しています。

 

↑ページTOPへ

 おかげさまで、東京コロニーが受託運営しております東京都障害者ITサポートセンターは今年で5年目を迎えます。この間、本当にたくさんの方々と出会い、これまで気づかなかった多様なニーズを教えていただくこととなりました。

 節目を迎えたこの機会に、皆様のご意見ご要望に耳を傾け、今以上のサービス向上を図るべく、今後も努力していく所存です。これまで当センターをご利用いただいた方も、これからの方も、下記の「問い合わせフォーム」より、センターへの(あるいは一般的なICT利用についての)ご意見、ご要望をお送りいただけますと幸いです。他県の方もそちらの地域の状況など、情報をお寄せいただけますとうれしいです。

 社会参加の可能性を左右する情報利活用支援事業の発展のため、皆様のご協力をいただけましたらば幸いです。何とぞよろしくお願いいたします!

(堀込)

●東京都障害者ITサポートセンター
電話 03-3208-0471  FAX 03-3208-0472

問い合わせフォーム

↑ページTOPへ

 「智恵の和」は「障害を持った方々と共にJava言語によるエンジニアリングを追求する」をテーマに発足したボランティアグループです。毎月1回の講習会を地道に続け、今年で7年目を迎えました。
  メンバーは当初、東京コロニーの「IT技術者在宅養成講座」の修了生を中心としていましたが、今はその輪も広がり、視覚障害、聴覚障害の方なども含め多くの方が参加しています。
  講習会の構成は2本立て。前半はPCを使っての技術講習で、現在はJava言語は一休みし、Ruby言語を学んでいます。後半は講師の方が持ち回りで、携わっている仕事や技術トピックスを話します。どちらも日頃自宅で仕事をしていることの多い受講生にとっては、最新の技術や現場の空気を肌で感じる大変貴重な機会となっています。

 現在の活動のやりとりはmixiのコミュニティを通じて行っています。参加ご希望の方はぜひご連絡ください。

(岩田)

■最近の講義テーマ■

「Webアプリケーション・フレームワークは この先どう進化していくのか?」

「ITエンジニアに求められるもの
      〜クリエイティブな仕事の確立を目指して〜」

「これからはシンプルなドメインモデル」

※智恵の和サイト
http://red.japanlink.ne.jp/chie/index.html
※エンジニア向けフリーペーパー「EM ZERO」Vol.0に、「智恵の和」発起人の萩本順三さんが智恵の和への想いを書かれています。
http://www.manaslink.com/emzero_vol_0

↑ページTOPへ

◆株式会社日本アイデックス にて 在宅勤務決定
  I.M さん 脳性麻痺 2種1級
(IT技術者在宅養成講座 2004年修了)

I.Mさん
   

◆マイクロソフトオフィススペシャリスト Excel2003 合格
  M.R さん 頚椎損傷 1種1級
(IT技術者在宅養成講座 受講中)

M.Rさん
   

  T.N さん 外傷 1種1級
(IT技術者在宅養成講座 受講中)

T.Nさん
   
◆マイクロソフトオフィススペシャリスト Word2003 合格
  M.R さん 頚椎損傷 1種1級
(IT技術者在宅養成講座 受講中)
M.Rさん
   

 



編 集 後 記

 最近、ご近所でも、「在宅勤務」をしている人が多いことを知りました。子どもの送り迎えのためであったり、お勤め先の方針であったり…。かくいう私もこの春、足のケガのため一時的に在宅勤務を経験しました。背景も実にさまざまですが、少しずつ社会に根付いていることを、身近なところから実感しました。

(吉田)

↑ページTOPへ
トライアングルの目次へ東京コロニー・職能開発室のトップへ