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■重度身体障害者の在宅就労を考える
機関紙『トライアングル』は三菱商事株式会社様のご協力により発行しております。

Vol.37
CONTENTS 2006.3(平成18年)

■雇用されないで働く在宅就労に、初めて国の支援策誕生!

■障害をもつ方の在宅勤務事例

■「SOHO AWARDS 2005」開催!

■シリーズ第5回 東京都障害者ITサポートセンター便り
  『盲ろうの方のIT講習って、どうやるの?』

■短期IT講座「Web基礎編」スクーリング開催

■おめでとう

 障害者雇用促進法の改正トピックについては、昨年このトライアングルVol.35の誌面でお伝えしましたが、いよいよこの4月からその改正障害者雇用促進法が施行されます(一部については平成17年10月1日より施行)。

改正の大きな柱は、以下の3点です。

○精神障害者に対する雇用対策の強化

・精神障害者(精神障害者保健福祉手帳所持者)を雇用率の算定対象にします(法定雇用率は現行(1.8%)通り)。

○在宅就業障害者に対する支援

・自宅等で就業する障害者を支援するため、企業が仕事を発注することを奨励します(発注元企業に特例調整金等(障害者雇用納付金制度)を支給)。

・企業が在宅就業支援団体を介して在宅就業障害者に仕事を発注する場合にも、特例調整金等を支給します。

○障害者福祉施策との有機的な連携

・障害福祉施設体系の改革とあいまって、障害者雇用促進施策と障害者福祉施策の有機的な連携を図ります。


在宅就業障害者に対する支援
在宅就業障害者に対する支援


 上記の在宅就業支援の部分は、一言でいうと、「個人ベースで働く障害者の方や、そうした人に仕事の仲介をしている支援団体に仕事を外注すると、発注元企業にもメリットがある」ということです。こうした考え方は、雇用一辺倒の助成制度しかなかった今までと比べると、全く新しい支援策といえます。事業主と支援団体双方にとって真に使いやすい制度となりえるかどうか、それは今後、実施の中で時間をかけて検証していく必要がありそうですが、何より、重度障害者の在宅就労を進める道にやっと光が当たってきた、そんな気持ちになっております。

(堀込)

※詳細は以下の厚生労働省のサイトをご参照ください
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/shougaisha01/index.html

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阿部さんの作業風景

阿部 大樹さん  
(頚椎損傷1種1級)  
(IT技術者在宅養成講座 '99年修了)

株式会社コムサ
 システム開発担当

 今号は、久しぶりに在宅雇用の事例です。在宅でプログラム開発に従事される好青年、阿部大樹さんをご紹介しましょう。コムサ様との出会いは、Vol.18に詳しいように、ネット上のお仕事広場でした。
http://www.tocolo.or.jp/syokunou/triangle/vol18.html#book2

 最初は単発の業務受注としてトライアルからスタートし、そしてその後7年が経過。さて、阿部さんはどのように成長されたのでしょうか…。

Q:現在の仕事内容などを教えてください。もう入社7年になられるのですねぇ。

 はい。年を取るはずです(笑)。現在も仕事は基本的には当時と同じで、POSレジ用のソフト開発です。

 VBとACCESSで組んでいます。中古ゴルフショップ用やトレーディングカードを扱っているショップ用などが中心です。“当時と同じことをしている”と言っても、時代が変わると変更を余儀なくされることがたくさんあります。例えば、新しいバーコードリーダーが出てきたり、ネットを介しての新しいサービスプログラムなどが必要になったり。

Q:ネットを介して、と言いますと?

 例えば、在庫情報をそのままネットオークションに出すソフトとか。フリーツールでもこの種のものがあるのですが、それでは個別にうまくいかないこともあり、作りました。いやー、体が2つほしいですよ、日々、新しい技術についていくのが精一杯ですね。

Q:7年間在宅でやっていらして、一番大変だと思ったことと、達成感を感じたことを教えてください。

 達成感は、大きな山を越えたとき。以前は新品と中古の管理だけしていたのですが、そのうちに商品の程度の管理や単品の管理もできるようになりました。仕様の変更時はなかなか作業が進まない仕事もありますね。でも、それをクリアした時の喜びは大きいです。

 大変なことは、開発途中で煮詰まって進まない時。進捗管理は自分に任せられていますが、1日に何回もメールや電話で連絡をとりあいますね。

 日々せまる課題はネットで調べたりもしますが、どうしようもない時は、上司のサポートで何とか解決できることが多いです。上司はプログラマーではないのですが、その経験から非常にクリアに色々なことを示唆してくれますので、勉強になります。

Q:まわりの方に支えられて、の7年間だったのですね。

 本当にそうです。色々あった中で一番鮮烈に感じたことを一つ。

 社員が少なくなった時期があり、自分が在宅で顧客対応の電話に出たことがあったんです。その時初めて色々なことがわかりました。ユーザーさんの「あーしてください。こーしてください」という要求を断らないといけない大変さ。あらゆる苦情の矛先になっている電話対応をいつも会社でしてくれている同僚。

 「できないの?」の質問に、「大変申し訳ないのですが、これについては次期バージョンで…」と答える辛さを知った時、在宅でノホホンと開発をしていた自分に気づき、あらためて、同僚に「ありがとう!」と思いました

Q:なるほど、在宅勤務者がわかりにくい部分ですね。

 そうなんです。やはり、会社の人と接点が少ない分、会社の状況や情報が入りにくく、自分も刺激が少ないという現実があります。

 意見交換も会社にいれば意図しなくてもできるし、同僚との相乗効果で頑張れる。その点は、在宅は不利は不利ですね。

 だけど、それは踏まえた上で、作業が遅れがちにならないよう、待ってもらってるタイミングできっちり結果を出さないと。そのことが信頼につながりますから。だって、通勤しなくてもいいっていう最大のメリットをもらっているのですし。

Q:今一人暮らしをされているのですね。

 ええ。3年になります。24時間同居人やヘルパーさんがいるのですが、自分でそうした人の募集や、やりくりをするのが一苦労。今後、今以上に支援費の削減なども考えられます。

 実は現在、このことを事業としたNPOのメンバーにもなっているので心配なことの一つです。こうしたオフの活動も結構時間を取るので、本当はうまく仕事とオフを時間で割り切りしないといけないのですが、仕事が終わっても色々考えてしまい自己管理できてないんですよね。パソコン講習の同期の仲間はみんなうまくやってるようで羨ましいです(笑)。

Q:最後に、日々IT学習と格闘している後輩たちにアドバイスがあればお願いします。

 アドバイスなんておこがましいのですが。僕は、「いつかいい日が来る」。いつもそう思っていたし、そう思っています。自分が動くとまわりが動く。でも自分が動くってエネルギーいりますよね。やる気に満ちた時もあるけど、切羽詰らないと動けない時もある。でも、やりつづけていると「だめかも」と思った時にポっといいことが起こったりする。そして「自分にもこんな日が来たんだ」と思う時が来るんです。

 一人暮しを始めた時も仕事を得た時も、そこに至るには長くかかりましたけど、周りの人に助けられながら実現できた。それはやっぱりあきらめないでやり続けたから。もし僕が言えるとしたらそんな事くらいです。


株式会社コムサ様のウェブサイト
株式会社コムサ様のWebサイト


インタビューを終えて:

 久しぶりにお会いした阿部さんは、一人暮らしも板につき、7年間在宅で開発を続けて来られた年輪も加わって、どっしりとした安定感を感じました(実際、ちょっとドッシリされたかも(笑))。

 また一方で、NPO活動の話をされる時の横顔は実にしっかりとした事業者さん。仕事との両輪、体にくれぐれも気をつけて。時には昔のように映画の話なんかもしましょうね!

(堀込)

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 SOHOとして事業に携わる人たちが、日常活用している「役立つ、おすすめ」を評価しあい、年に一度その最高峰を選考・表彰するイベント「SOHO AWARDS 2005」が、昨年11月1日(火)に開催されました。

 一昨年の第1回目に引き続き、今回も当事業所が主催者の一員として運営にあたり、個人としても選考委員をおおせつかりましたが、前回を大きく上回る74のノミネートに進展を感じ、また、その多彩さにも眼を見張るものがありました。金賞に「Firefox」「Sleipnir2」といったタブブラウザ(1つのウィンドウ上でWebページの複数表示が可能)の代表格がそろって選ばれたのをはじめ、銀賞にはソーシャルネットワーキングサイト「mixi」やWebアクセシビリティのポータルサイト「インフォアクシア」が受賞するなど、いずれもITツールのユーザであるSOHOの方たちが実践で活用して得た現実的な評価であるだけに、その利便性、有用性には選考委員一同も納得のようすでした。

 このイベントは、SOHOにとっての便利ツールを紹介しあうことにとどまるだけでなく、SOHOの認知度を消費者・提供者の双方に向けて発信する重要な広報活動でもあるといえます。当事業所の活動に近いところで言えば、在宅就業を目指すワーカーにとっては、情報とコミュニケーションの充実を期待できる場所でもあり、SOHO分野の発展は自らの職域の拡大に少なからず結びつく可能性をもっているだけに、今後の動向に注目し、協力していきたいと思います。

 余談ですが、「障害のある人たちのSOHO支援」として、当事業所が今回のノミネートに名を連ねるという栄を授かりました。残念ながら受賞にはいたりませんでしたが、障害のある人たちを含め、多くの方々からの評価と期待が寄せられていることを知り、大きな喜びとわずかなプレッシャーを感じました。

(吉田)


AWARDS 2005」Webサイト
「SOHO AWARDS 2005」Webサイト

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 センターでは、今年度より、盲ろう者友の会様のご協力により、盲ろうの方を対象にしたIT講習を行っております。「見えない、聞こえない、という方に一体どういう方法で講習をするのですか??」というご質問をよくいただくのですが、さて皆様はどんな風にイメージされますか?

 人の病気や障害の状況は千差万別で個別の大変さが常にあるものです。盲ろうの方の見え方や聞こえのバランスも本当にそれぞれです。皆さんが最初に思い描かれるのは、ヘレンケラー女史のような生まれつき視覚も聴覚も全くない方でしょうか。

 しかし、実際には、「生まれた時には見えていたけど段々と視覚を失い、そのあとで聴覚も失った」方や、「聴覚を先に失い、加齢に伴い視覚もかなり低くなっている」方など状況は様々です。

 したがって、獲得されているコミュニケーション方法が何であるかということをポイントとして、その方とのやりとりの方法を決めていきます。

 視聴覚を失った方あるいは両方がかなり低くなっている方は、コミュニケーションの要は触覚になりますので、現在こちらでやっている講義では、講師との会話は触手話(手話や指文字をお互いに触る)や指点字(点字を指で手の甲に叩く)で行っています。また視覚が少しある方ですと、目の近くで手話を行ったり、紙に文字を大きく書いたりします。パソコンの入力はキーボードがほとんどですが、アウトプットは点字ディスプレイや画面拡大を使っています。

 講師はそれぞれの方のコミュニケーションの特徴を理解し、白色がよく見える方には手袋をはめて画面を示すなど、受講者さんと協力しあって工夫を凝らしています。

 情報の入手が困難な方ほど、ITの恩恵は限りなく大きいはず。まだまだトライアル途中ですので、皆様のアイディアやヒントをどうぞセンターにお寄せください。

(堀込)

ピンディスプレイ「ブレイルノート46D」
ピンディスプレイ「ブレイルノート46D」


●東京盲ろう者友の会 http://www.tokyo-db.or.jp/

●東京都障害者ITサポートセンター http://www.tokyo-itcenter.com/

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 在宅で就業を希望する方たちが、Webコンテンツ制作における基本スキルを短期間で身につけ、雇用や就業レベルをめざすための「第一歩」を支援するため、短期IT講座『Web基礎編』」を、昨年10月より約3ヶ月のカリキュラムで実施し、1月18日(水)最終講義となるスクーリングを実施しました。

 ここまで在宅で学んできた3名の受講生が一同に会し、これも初の対面となった講師とともに3ヶ月間の講座の復習や課題発表などを行いました。全体の検証にはじまり、主にインターネットを介したこれまでの講座では理解が遅かった点を補足し、プレゼンテーションなどにも取り組み、最後は今後の就業に向けたヒアリングを行うなど、基礎編とはいいながらも非常に中身の濃い講座となりました。

(吉田)

スクーリングの様子
スクーリングの様子

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◆マイクロソフトオフィススペシャリスト試験 Word2003 合格

H.N さん 関節リウマチ 1種1級
(IT技術者在宅養成講座 受講中)



編 集 後 記

 今年度も「IT技術者在宅養成講座」の選考を行い、最終的に5名の方を第24期講習生に選ばせていただきました。

 作文や面接で、それぞれの方のITを学びたい、就労がしたいという思いをお聞きする中で、人数を絞らざるを得ないことは大変申し訳なく思います。今回応募された方には個別の相談会を開催する等、今後の方向性を探るお手伝いができればと考えています。

(岩田)

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