本や新聞、テレビなどは、私たちが日頃情報を得るためには欠かせないメディアです。しかし、印刷物は手に障害のある人がページをめくれなかったり、視覚に障害のある人には読むことができなかったりします。また、テレビは視覚や聴覚に障害のある人にとって不自由な点もあります。
パソコンやインターネットの発展により、文字を音声に変換して読み上げたり、画面を拡大したりできるなど、障害に応じて適切な形に情報を変換して利用することができるようになりました。Webサイトも様々な情報を得るために非常に便利なものですが、音声で読み上げができない作りになっていたり、文字の大きさや配色をユーザが変更できない作りになっていたりと、障害があるためにせっかくの情報を利用できないことも多くあります。
こうした問題に対応するため、誰にとっても利用できるような状態をアクセシビリティと呼び、2000年頃から情報通信機器・サービスに対するアクセシビリティ対応の取り組みが世界的に高まりました。日本においても、機器やサービスのアクセシビリティに関するJIS化の取り組みが始まり、その一環としてWebコンテンツに関してもJIS化が検討されています。
2003年10月には、情報技術標準化研究センターのWebサイトにWebアクセシビリティJIS素案の公開レビューが掲載され、パブリックコメントの募集が行われました。現在、それをもとに修正案が作成されています。素案によると、高齢者・障害者等がWebコンテンツを利用する際のアクセシビリティを確保・向上させるために、企画、制作、保守、運用に至るまで配慮すべき要件が規定されています。
現在、Webサイトによっては、通常のコンテンツと、テキストのみのコンテンツといったように同じ内容で複数のコンテンツを用意しているものもあります。しかし、JIS化における基本的なポリシーは、一つのコンテンツで多様な利用者に対処するということです。そのためには、音声読み上げなど利用者が自分に適した支援技術を利用できるよう配慮することが求められます。本JISは、2004年半ばには発効される見通しです。
せっかくJIS化が行われても、自治体や企業が積極的に採用しなければ効果は得られません。アメリカでは、連邦政府の調達基準としてWebアクセシビリティが法制化されており、民間にも大きな影響を与えているようです。日本においても、公共分野の調達基準として本JIS規格が利用されることを期待しています。私たち職能開発室も、今後はよりアクセシビリティに配慮したWeb制作を行っていきたいと考えています。
[鶴田]
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