「身体障害者が家にいたままでパソコンを使って仕事をし、日々の生活の中でささやかな充足感に浸り、それに加えて、それだけで生計を立てることは難しいにしても、なにがしかの収入を得ることができたら」。これは、誰でも直ぐに思いつくことですよね。 私に肢体不自由(CP2級)の娘がいるんですが、高校を卒業してどこへも行き場がなく、(親が)悶々とした日々を送っている時に、そんなことがちらと頭をかすめました。遙か10数余年前のことです。 「えっ、障害者がパソコン使うって。障害者がパソコンなんて判るの?」という時代でしたから、ただ妄想しただけで本気になって取り組む気もありませんでした。
さて、発想はいとも簡単な「障害者の在宅就労」ですが、組織的にその実現を目指そうとすると極めて難しいものがありますね。 ハードルが3つあるのではないかと考えています。
第1のハードルは社会通念だと思うのです。
「え、障害者の在宅就労? ふーん。そんな職業形態もあり得るか。」と受け取ってくれる人が近頃は随分増えたんじゃないかなあ、という印象を受けます。
まさに時代の流れであると共に、プロップステーションや東京コロニーの方々の先進的な取り組みのお陰と思われますから、これらの方々に感謝と敬意を払う次第です。
その意味で、第1ハードルは、全国どこへ行っても、もう消え去っているのかも知れません。第2,第3のハードルについては、以下、順を追って申し上げましょう。
ここで、サイバード結成の経緯をかいつまんでお話します。 日本筋ジス協会宮城支部に、筋ジス症児者の自立と生きがい追求のための事業活動を展開する、在宅プロジェクト委員会というチームがあるのですが、一昨年暮れに、この委員会からパソコン教室を開いて欲しいという要請が私どもにありました。
主として筋ジス児を対象とする西多賀養護学校から機材と教室を提供して戴けることになり、また多くのボランティアの協力も得て、昨年春に毎週土曜日計9回のパソコン教室を開催しました。
この教室が仙台のマスコミに取り上げられ、それが「みやぎ情報交流推進グループ」(仙台市内の異業種交流グループ)の関心を引き、それがまたパソコンを利用した障害者の作業所といったニュアンスでマスコミによって報じられました。
そのニュースを見て現れた人物が現在サイバードの副代表である広岡です。
広岡の出現によって、第2のハードル、最も高く厚いハードルがクリアされたのです。
白鳥は筋ジスの子を持つ家庭の主婦、私はコンピュータとは無縁の世界にいてその方面の事情に疎いことから、仮にそういった組織を作ったにせよ、誰が中心になって組織の運営維持を図って行くことが出来るのか、という暗礁に常に乗り上げるわけです。
そんな折りに、私達と同様に在宅就労の道を志して、ソフトウェア産業から仙台へUターンして来た広岡は、私達にとってまさに天の配剤ともいうべき人材でした。
そんな経過で、昨年8月の準備会を経て、同年10月、広岡を実質的な組織運営中心とし、白鳥を組織代表とする障害者就労支援組織サイバードが発足する運びとなりました。
17名で発足した会員は次第に増え、現在のところ、正会員15名、支援・ボランティア会員30名、計45名の会員構成となっています。 会の運営に関する事務連絡、会員間の情報伝達、データの授受等は可能な限りインターネットを利用して行うため、メーリングリスト
(同報通信)とFTPサーバを運営し、ボランティア会員がその維持管理に協力しています。
さて、第3のハードルは会結成のための制約条件に関するものではなく、会の維持運営、今後の会の発展に対するハードルと言うべきでしょう。
率直に言って、それは会員個々人のパソコン技術力、及びパソコン労働に対する気力の問題ではないかと考えています。 正会員は数人の健常者を除いて全て在宅障害者で、広岡以外は当然ながらコンピュータ業界に関わっていた人はおりません。
趣味或いは意思伝達手段としてパソコンを操作していた人はいますが、中には少数ですがパソコンに触れたのも初めてという人もいます。
パソコンソフトは習えば判るというものでは無く、その効果的な修得術は「習うより慣れろ」、「考えて考えてそれでも判らなかった部分を習え」、「実戦で鍛えろ」等々であると思いますので、ここは一つ会員各自の気力に委ねるしかないかと愚考する次第です。
出発したばかりのサイバードの未来を占うのは早計に過ぎるかも知れませんが、10年後に我がサイバードはどうなっているのでしょう?
健常、障害を問わず、在宅勤務、在宅就労といった形態は、今後徐々に、そしていずれは加速度的に広がっていくのではないでしょうか。
サイバードは果たして生き残れるのでしょうか?
最後に、広岡によるサイバード命名の由来を。
『サイバードとは、体にハンディがあっても、ネットワーク上のサイバースペースでは鳥のように自由に翔ぶことができる、という意味を込めました。』
シンプルながらホームページを持っています。どうぞ、ご覧下さい。
http://www2.tinet-i.or.jp/cybird
ほんとの最後にちゃっかりと、何か仕事あったら声をかけてください。
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