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重度障害者の在宅就業において、福祉施策利用も視野に入れた就労支援のあり方に関する調査研究

(2)在宅就業支援団体の安定・発展のための社会的支え

 この項は、今後の障害者の在宅就業支援発展の切り札になるものである。いかなる社会の支えがあれば、一人ひとりの多様な「働きたい」を守っていけるのか。この点が安定したものであれば、支援団体は、要支援度の極めて高い在宅就業者を数多くフォローできるのはもとより、2章で課題としてあがった長期入院病棟や療護施設の就労希望者等も、条件付でも働くステージに上げ、見守りながら協働するような役目も果たせるに違いない。

① 強制力のある発注奨励

  ともかく仕事獲得の切り札を考慮する。「在宅就業支援制度における発注奨励策の強化(発注額の雇用率換算、報奨金対象となる発注条件見直し、国・自治体の発注義務等)」が必須である。また、ヒアリングの中で松山市の「テレワーク在宅就労促進事業就労奨励金及び発注奨励金」を知ることができた(資料参照)。これは、仕事を在宅の障害者(ひとり親家庭、60歳以上の者、要介護者を介護している者)に発注する企業はもとより、その受注・分配などをコーディネートする団体にも助成金が利用できる。在宅就業支援制度と違い、発注金額の条件が5万円以上となっているなど、中小企業にも使いやすいしくみになっている。障害者に限らない、こうした自治体のインクルーシブな施策は非常に今日的であり、期待を感じさせる。

② 運営にかかる費用に公的な助成

  あわせて、2章に記したような理由から、在宅就業支援業務に、運営補助的な公費投入を必要とする。支援団体は、訪問支援をはじめとするキメの細かい福祉的な支えを常に行う状況がある中で、ITの技術支援や在宅雇用支援など、ノウハウの必要な高いレベルのサポートを行なっている。また、2章で明らかになったように、多様な障害者(あるいは谷間の人々)を受け入れ、在宅におけるジョブコーチ的な役割をも果たしている。加えて事業主のフォローや在宅支援を開始したばかりの団体のアドバイザー役も担っている。そうした事実を社会は理解し、公的な補助における福祉就労との現在の不均衡は早急に解決すべきである。

  発注奨励と公費補助による新しい支援制度を一般市民にわかりやすく設計するためには、これまでのように短期的な助成金を都度つけるのではなく、恒常的施策として位置づけることが良策と考える。

③ 支援団体の事業所としての明確な位置づけ

  在宅就業支援制度の中に支援団体の位置づけはある。しかし、障害者自立支援法における就労支援施設(就労移行事業所・就労継続事業所A/B)等と比較すると、体系としてその存在はあやふやなものである。

  少し大胆な発想であるが、在宅就業支援団体が、その特徴を備えたままで、B型施設のような福祉就労事業者と見なされることは将来的にいかがなものであろう。あるいは「就労継続支援C型」のような新体系としての位置づけはどうか?。

 福祉就労は、今後、欧米の保護雇用のような支援つきの雇用事業所形にシフトしていく方向の提言もあがっている。誰もが適切な賃金補填を受けながら労働法の適応になって働く。そういう風に時代が動く中で、在宅就業だけがあやふやな団体として施策の外になってしまわぬよう、支援団体の事業所の位置づけを明確にしておくことが肝心である。

④ 社会的事業所としての可能性

  2章でみたように、支援団体の中には、障害以外の理由による就業困難者も対象として受け入れているタイプの団体もある。その種の組織は、「社会的事業所」(注2)などの助成金を利用し、インクルーシブな形態での継続の可能性もあるだろう。テレワークは障害のある人だけでなく、様々な理由によって在宅を余儀なくされている人々にも活用されている(1章参照)。障害によるハンデイが最も少ない形で協働できる働き方かもしれない。

⑤ 地域リソースとしての正しい認知を

  未来のイメージに不可欠であるのは、ハローワークや就業・生活支援センターをはじめとした地域の就労支援機関との関わり方であることを言及したい。前述したように、これまで在宅就業支援団体は、就労支援の地域リソースとして構図に入っていない場合が多かった。
「在宅就労を社会で支える」を今後実現するためには、その認知度を徹底的に上げることが必要である。


注2: 社会的事業所

障害のある人たちが労働を通して、地域であたりまえに働くことによって所得を得ていくシステム。滋賀県や箕面市などでは既に「社会的雇用」と呼ばれる考え方により、一定の要件(30%以上重度障害者を雇う等)を満たした事業所に賃金補填等を行う就労制度が設定されている。

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