ここでは、アンケートから見えた課題の中で、当報告書では深く精査できないが、別途考慮すべき、大事な問題を提起したい。
・ヘルパー利用についての課題
現在、障害者自立支援法の中では、公的ヘルパーは通勤や通学に利用できない。
また、収入が発生する時間に対しても使うことができないので、介助が必要な在宅就労者は、就業中はヘルパーに来てもらえない。このことが社会参加を大きく妨げているということについては指摘も多いところである。
特に一人暮らしの在宅就労者にとって、普通に生活介助をしてもらえないということは、トイレはもちろん、鼻水が出ても拭くことができない。ヘルパーに依頼したいのは、書類を読んでもらうことでも、キーボードを押してもらうことでもなく、普通の生活介助であるということを考慮したうえで、早急に対処願いたい。
ヒアリングでは北欧の事例が出た。パーソナルアシスタント制度を利用し、 家族の介護や援助を受けることなく在宅でパソコンを使い仕事をしている障害者の姿や、ベッドのような大きな車いすの利用者が、2名のアシスタントに介助されて通勤している姿がそこにはあった。「働く」という権利を当たり前に守る国家(あるいは国民)の姿勢は、大きな指標であり、我々の目指す方向性に自信がもてるとともに、今後への責務の重さも実感した。
・医療や生活支援の制度課題
暮らしの場が病院や生活施設である人々が、そこでの就業を希望する際におこる課題がある。こうした方にとってはそこは一時的な場所ではなく、事実上長い生活の場所であるから、その中の一時を社会人として責任ある時間にすることは、生活にメリハリがつくだけでなく、その人を人間的に成長させることは自明である。
しかし、現実的には制度目的が医療や生活介護が中心の場所であるから、いきがいクラブ的な活動はあっても、「働く」ことへの根本的な後押しの制度はない。
昨年度の当事者団体の研究調査(注1)によると、国内のいくつかの病院でのトライアルや、作業療法士及び併設の病弱学級の教師等による支援など、評価されるべき試みは少しずつ始まっているようではあるが、継続が保障される選択肢にはなりえていない。そこで、ここは餅は餅屋であるから、「仕事」を本来的な目的とした在宅就業支援団体やあるいは施設就労が、そうした現場まで踏み込んで手厚く支えられるしくみができれば理想的である。
巻頭インタビューの方の「テレビを見て時間を使いたくない」という切実な声が示すように、1日24時間福祉の利用者であったとしても、「働きたい」という意欲と作業ができる1時間があるのであれば、「ワーカビリティはある(J団体)」。作業パーツを紡ぐことのできるノウハウを持った支援こそがここに必要である。
注1: 社団法人日本筋ジストロフィー協会
「筋ジストロフィー患者の就労のための、就労支援実証モデルの試行」
(平成20年度障害者保健福祉推進事業(障害者自立支援調査研究プロジェクト))