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重度障害者の在宅就業において、福祉施策利用も視野に入れた就労支援のあり方に関する調査研究

【参考】在宅就業を後押しするスタイル〜一般的なテレワークをめぐって〜

(1)テレワークの意味と歴史

 テレワークは、情報通信機器やそのネットワークを利用して、勤務場所等の制約を受けずに働くことができる就労スタイルである。米国では、1970年代の石油危機や環境汚染問題への対応から、マイカー通勤による交通渋滞を緩和するため施策として導入されたという経緯を持つ。その後のクリントン政権下でゴア副大統領が提唱した「情報スーパーハイウェイ構想」やサンフランシスコ大地震等における災害時のリスク分散策として、急速に普及をみた。

  わが国でも、1990年代頃からサテライトオフィス実験などの形で、テレワーク施設の設置がはじまったが、当初は情報通信ネットワークの整備を主眼にしたものから、徐々に新しい就業形態の開発といった方向へと発展してきている。とりわけPCの急速な普及と女性の労働市場参加の拡大によって、在宅勤務や在宅就業の形で進展したのが、ひとつの特徴である。2003年のIT化推進の国家戦略e-JapanUにおいても、IT利活用の主要テーマとして取り上げられ、テレワーク人口を2010年までに就業人口の20%までに高めることが掲げられた。テレワーカーの数を正確に把握した統計はないが、推計では就業人口の15.2%(国土交通省「平成20年度テレワーク人口実態調査」)とされる。

(2)形態

 テレワークと言ってもその形態は様々であるが、大きくは就業形態等によって分類される。雇用型と自営型に分かれるが、後者の自営型は、実施場所を自宅だけでなく自由に選択しながら就業する個人事業者などである。本章で述べた「在宅就業障害者」の多くが、自宅で個人事業者として就業していることから、この自営型にあてはまるといえる。

【就業形態の違いによるテレワークの分類】
■雇用型テレワーカー ・外勤型テレワーカー
・内勤型テレワーカー
・通勤困難型テレワーカー
■自営型テレワーカー
■内職副業型テレワーカー

(資料出所)日本テレワーク協会Webサイト

(3)メリット・効果

 一般に、テレワークは、交通渋滞や通勤ラッシュの緩和など社会的なメリットもあるが、基本的には、企業と従業員の双方にメリットをもたらすという点が重要である。従業員にとっては通勤の必要がないため、自分の時間にゆとりを持つことができることや育児や介護等との両立を図りやすい。こうしたワーク・ライフ・バランスの観点からの効果を持つことに着目し、政府の「仕事生活の調和推進のための行動指針」においても、2012年までにテレワーカー比率を20%までに引き上げることが目標として掲げられている。

  企業にとってもメリットは大きい。オフィス・スペースの節約など管理コストが削減できることや、仕事の中断されることなく業務を効率的に進められるなどの効果が指摘される。また、外勤の営業などモバイルワークの場合、移動時間の短縮によって顧客との面談時間を増やし、顧客満足度の向上を図るという効果も期待される。さらに最近では、パンデミック対策や大規模災害時の緊急対応としても着目されてきた。

  テレワークが普及してきたことは、単にIT利用の進展があったという背景だけでなく、、時代の流れの中で、人々の働き方を「より自由かつ柔軟に」変えていこうという動きが強まり、それが多様な形で姿を表わしてきたことが大きな背景となっている。働き方の多様性は、働く人々のライフスタイルの多様性でもあり、個人のライフスタイルに合った時間活用へと改めていくための方策としての意義を持つ。その意味では、就業形態の多様化というわが国の労働市場における大きな変化のトレンドのひとつでもあるといえよう。パートや派遣、契約社員の数が急速に増え、もはや全体の3分の1以上が正社員以外の従業員となっている。また、正社員についても、フレックスタイム制や裁量労働制が適用されたり、短時間勤務制が導入されたりするなど、勤務時間制度の柔軟化や弾力化が進んできた。とくに、短時間勤務制は、育児・介護休業の復帰後に仕事と生活の両立を図るうえでの有効な方策として注目されているが、これを更に在宅勤務と組み合わせることによって、より生活時間の確保につなげようという動きも出ている。

  このように、テレワークは、就業場所の自由な選択というだけでなく、就業時間の自由度の確保を図るという意味合いも同時に持っている。そして、時間と場所という制約から自由になることによって、通常の就業スタイルでは働くことが難しかった人々に対し、就業のチャンスを大きく与えるものとなる。育児や介護という家庭事情の制約がある場合ももちろんであるが、とりわけ障害のある人たちなど身体的な事情によって、これまで通勤できず就業機会がなかなか得られなかった人に対し、大きな効果を持つことに注目したい。言い換えれば、テレワークは、障害者の社会参加を支援し、その活動機会を大きく広げるための方策としての意義を持っているのである。

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