「請負としての在宅就業」という点に特化した支援策の先駆けとしては、1998年度に労働省(当時)によって実施された「障害者に対する在宅就労支援事業」が挙げられる。この事業は、在宅による雇用・就労をめざす障害のある人に対し、試験的にパソコン500台を貸与し、全国にある支援機関9団体の協力を得ながら在宅就労支援策を探るものであった。続いて99年度には、同じく労働省による「重度障害者の在宅雇用・就労支援システムに関する研究調査」が行われた。そして厚生労働省の「障害者の在宅就業に関する研究会(座長:諏訪康雄・法政大学大学院社会科学研究科教授(当時))」が2004年4月、「障害者の在宅就業に関する研究会」報告書 −多様な働き方による職業的自立をめざして−」を発表した。この報告書において、雇用以外の働き方による数々の事例や、在宅で働く人たちへのヒアリング調査による実情などが紹介され、それらをもとに、制度・政策としての「雇用以外の形態による請負型の働き方=在宅就業」の骨子と方向性がまとめられることとなった。
この研究会の報告書では、障害者の在宅就業を支援・推進していく要素として、①事業主等に対し、在宅就業を行う障害者への発注を奨励すること ②在宅就業者と発注者との間に立って仕事の受発注・分配などを行う支援団体を育成すること− などが挙げられ、ここに今日でいう在宅就業支援制度と在宅就業支援団体の役割が何であるかが検討された(資料参照)。すなわち、これまで草の根レベルで行っていた事例を考察したうえで、まず在宅就業の定義と位置づけの整理が導き出され、次いでその整理のもと、発注奨励を支援の柱にし、かつそれは雇用の奨励策に準ずることとした。加えて在宅就労を希望する人に対する育成・養成をも行うのが支援機関であるとの提言もあり、この報告が、粗削りながらも現制度(後述)の骨格として位置づけられた。ただ、こうした研究の成果も、在宅就業の将来像を大きく見据えたものというよりは、「まずは一歩前進を」という性格のであったため、民間の支援団体が引きつづき自身の力量や裁量で実績を重ね、そのなかで課題を見つけていくことが求められていた。