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重度障害者の在宅就業において、福祉施策利用も視野に入れた就労支援のあり方に関する調査研究

はじめに

 重度障害のある人たちの就労支援策のうち、請負型の「在宅で働く」という考え方については、すでに1990年代より数々の研究において論じられており、また、そのためには仕事の仲介や教育訓練機能をもつ支援組織の存在が不可欠であるとも指摘されていた。事実この時期、実践という側面においてそうした仲介機能をもつ団体がすでに各地で草の根的な活動をしており、それぞれ地域のニーズに応じるべく、手探りの状態から職域開拓や支援ノウハウの醸成に努め、現在の在宅就業支援制度の基盤をつくり上げていった。その後、通信技術の飛躍的な発展という社会変化も後押しとなり、こうした各地の動きを追うようにいくつかの公的支援策が試行された後に、2006年「障害者の雇用の促進等に関する法律」の改正に伴い「在宅就業支援制度」が創設され、15の在宅就業支援団体の登録をもってスタートすることとなった。これら制度と団体の誕生は、すでに注目されていた、在宅勤務による障害者雇用支援策の一環としつつも、主として「非雇用≒請負による在宅就業」を、多様な働き方のひとつとして確立させ、在宅就業者に対する仕事の発注奨励をもって定着・発展を望むものであった。

 そこから3年半あまりが経過した今日、全国の支援団体は、未登録のものもふくめてどのように生まれ、継続・発展をしているだろうか。また、一般企業や福祉施設等への通勤通所が困難な人たちの「在宅によって、働く意志や能力を活かしたい」という一人ひとりの願いは、本当に叶えられているのだろうか。

 本研究は、こうした問いに対し、あらためて在宅就業とその支援制度の実態を調査したうえで、目の前にあるひとつひとつの課題を整理していくという、おそらくこの分野におけるはじめての本格的な調査研究を試みている。そして、今後のあるべき方向のひとつとして、特に就労継続支援事業や就労移行支援事業といった、いわゆる福祉的就労の分野における在宅就労支援の可能性、および連携について言及するものである。おりしも政府主導で進められている「障がい者制度改革推進会議」の進行や、国連・障害者の権利条約の批准に向けて障害者雇用・就労にかかる関係法制度の見直しが求められているこの時期に、在宅就業という働き方のありようについて提言できることはこの上ない機会であり、今後の制度改革にさらなる発展を望むと同時に、本報告書がその一助を担えればと期待する次第である。

 なお、本研究と並行して、福祉的就労分野における在宅就労支援を実際に試行することも視野に入れていたが、研究期間が限られていたこともあり、次年度以降の課題とさせていただいた。ただし、この試行のためにおこなったヒアリング調査等によって、いくつかの優れた先行事例も見られ、その紹介をもって次につなげていきたい。

 最後に、本研究におけるアンケートおよびヒアリング調査に快くご協力いただいた、全国各地の現場で支援活動を続けている各団体、および在宅就業をされている各位にこころよりお礼申しあげる次第である。

2010年3月

「重度障害者の在宅就業において、福祉施策利用も視野に入れた就労支援のあり方に関する調査研究」
委員一同

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