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■重度身体障害者の在宅就労を考える
トライアングル
機関紙『トライアングル』は三菱商事株式会社様のご協力により発行しております。

Vol.47 
CONTENTS 2009.7(平成21年)

■この先どこに向かうのか? 在宅就業支援制度 〜更新手続後の雑感〜

■障害のある方の在宅就労事例

■特別寄稿 「職業人の在りよう」

■シリーズ第12回障害者IT地域支援センター便り  新企画「ライセンス・カフェ」

■阿修羅展特別鑑賞会に参加して

■おめでとう

 東京コロニーでは、この5月に、厚生労働大臣が認可する「在宅就業支援団体」の更新手続を行い、引き続き3年間、登録認可されることとなりました。

 在宅で働く障害のある人たちへの仕事の発注奨励策を盛り込んだ在宅就業支援制度が創設されて、はや3年。時間的制約や移動困難のある方が「在宅で仕事を請け負う」というSOHO型のワークスタイルは、働く選択肢のひとつとして期待され、受発注の仲介・推進役となる在宅就業支援団体の登録も現在18を数えるまでになりました。これら団体のなかには民間企業が運営するもの、福祉就労施設と併設して行うものなど、それぞれが工夫を凝らして制度を幅広く活用する事例もみられ、後進のモデル的な役割を果たしているといえます。

 しかしながら、多くの課題も浮き彫りになっているのも事実。特に、発注に対する報償制度の条件が限定的で、大きな取引に偏りがちな点、運営基盤について各団体に任せきりの点、そして、多様な受け皿として最低限必要と思われる「全国で100団体」という政府レベルの目標達成も、遠い道のりというより、道筋そのものがどこへいったやら?という印象をぬぐえないのが実情といえます。

 3年という数字は、他の法令や制度にも見られるように、それまでのサイクルを検証し、次のステップに向けた見直しを行えるひと区切りの段階ともいえるもの。この間、支援団体同士の横のつながりも緩やかながら進展をみせ、意見交換会の実施、ノウハウを集約した広報誌の発行、教育事業の協働などの成果を挙げてきました。これらの成果と前述の課題を今一度つき合わせて、この制度を必要としている人たちや事業主に有用な制度としてスムーズに届くよう、官民で制度のあり方を考える時期に来ているのではないでしょうか。職能開発室においても在宅ワークを希望する新たな声が増え、そのニーズは痛いほど感じています。運営において公的な支えが無いのは決定的に厳しいですが、自らの運営努力はもちろん、他の福祉制度をうまく併用するなどの道も探りつつ、次の3年間をさらに飛躍の期間としていくよう決意を新たにしています。

(吉田)


団体情報
団体名:社会福祉法人東京コロニー
厚生労働大臣登録在宅就業支援団体 第1300001号
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橋沢さんの作業風景
橋沢さんの作業風景

橋沢 春一さん  (30代)
(脳性麻痺 1種1級)
(IT技術者在宅養成講座1996年修了)

SOHO開始時期
1996年
得意とする仕事
HTML作成およびWEBプログラミングを中心とした開発作業
就労場所
自宅


 今回は、SOHO生活13年の橋沢春一さんが満を持してのご登場です。ベテランSOHOの橋沢さんは、Windows黎明期の時にコロニーの在宅パソコン講習をスタートされました。ITの新しい波を何度も乗り越えながら、現在コロニーの在宅就労チーム「es-team(エス・チーム)」の中核であり貴重なムードメーカー。どんなお話が聞けるでしょう。

 

Q:2年間のパソコン教育が終わってから、すぐにSOHO活動に入られたのですか?

 その後5年くらいは「ONE・STEP企画」という修了生の自主グループを作って、そこでデータ入力やソフト開発をしていました。ただ、それはまだ教育の延長といった感じで、気持ちの上では「仕事」という意識はなかったと思います。変わったのは、2000年からスタートしたSOHOチーム「es-team」になってからでしょうか(注1)。これはコロニーさんとタッグを組んで事業として開始していますから、僕は一事業主としての参加であり、まさにビジネスです

Q:もう少し具体的に、その「ビジネス」感をお聞かせいただけますか?

 まず収入が教育の延長時代よりも増えました。それと「これが、自分が責任を持つ仕事なんだ!」という強い気持ち。お客様を意識するということかもしれません。「es-team」になってからは、直接クライアントさんとコンタクトを取ることも多くなりましたから。これはSOHOビギナーにとってはいいことだと思いますよ、お客様と向かい合うことで初めて感じる怖さ、重み、意欲ってありますから。

 それと、グループ就労なので、チームでできるビジネスにも興味を持つようになりました。売上はもちろん、チームワーク感のアップにもつながるのがよいと思います。

Q:なるほど。ただ一般的にSOHOチームの場合、メンバーの目標目的も一様ではありませんし、稼ぎ頭が就職して抜ける…という事態もよくありますよね(笑)。

 ええ、確かに難しい面もありますね。メンバーの就職はもちろん、独立もあるでしょう。僕だっていいお話があれば就職も考えます(笑)。でも、たとえ通過点としての在籍だったとしても、今その時同じチームにいるわけですから何か共有できると思う。たとえば、以前にメンバーみんなで作った「es-team box」(注2)というガイドラインなどがそう。集団で仕事をする場合の作業の標準化を体験したことは、その後会社員になろうとフリーランスのままだろうと、間違いなく役に立つはずです

Q:もう少しSOHOというお立場について突っ込ませてください。教育延長時代も含んでの13年、フリーでやってこられた間に身につけられた考え方があれば教えてもらえますか。

 僕は就職したことがないので単純比較はできませんが、多分SOHOのいいとこって何と言っても自由さだと思います。時間の制限を誰にされることもないでしょ。これは最高にいいことで、最高に辛いことですよね。仕事を取るも取らないも、スケジュール含め全部丸ごと自分で受け止めるということですから。でもその分、「一事業主」という誇りというか自負はある。就職するより自分にはやりがいがあるのかも、と考えたりもします。

 それと、“ものづくり”への努力を一人で常にやっていくこと。僕は開発者ですから、カンを忘れないよう、毎日プログラムのコードを読むようにしています。過去の自分の作ったものとか他人のもの。新しい技術も大事ですが、案外昔の技術も必要なケースがあるのです。“ものづくり根性”はSOHOで身に付きました。仕事をし続けている間は、ずっと忘れないで持っていたいですね

Q:話は変わりますが、橋沢さんは仕事人である他に、実は趣味の人であり、地域活動の人でもあるとか。

 ええ、ともかく楽しむことが大事、楽しくなければやってられません(笑)。
 何でもチャレンジすること、人と繋がること、これらが僕の生き甲斐です。趣味のダイビングは高校卒業時からやってますし、地域でのIT支援活動(高齢の方、障害のある方を中心)はお金をもらわない「仕事」である、とさえ捉えています。いずれも喜びそのものですね。僕はワガママですから、喜びがないと何事も続かないんですよ(笑)。

Q:橋沢さんのそうしたお話は、うかがってるだけで楽しくなりますね。さて、そろそろまとめに入ります、恒例の、後に続く皆様へのお言葉を!

 数か月前、実はSOHOチームを2か月だけ抜けて、ある会社の専属のプログラマーをやりました。その時心に浮かんだことは、「僕が担当していたNGOのあのWEBは誰がやるんだろう」ということ。これには2つ意味があり、「ちゃんと後任がいるだろうか」という心配と、「あれは自分のものだった」というちょっぴり淋しい気もちです。この後者の気持ちが「仕事」への愛着や責任なんだと思います。こういう気持ちを人生で知ることができるのは、やっぱり幸せだと感じますね。

 最後に僕の自論は、人生は3C(Chance Challenge Change)の繰り返しだということ。何事にもチャンスがあり、それにチャレンジをし、チャレンジしたら必ず何かが変わる。変わり続ける事が大切なんだと思います。みなさーん、楽しく3Cでイキましょう!!(笑)

 

(注1) SOHOグループ「es-team(エス・チーム)」の立ち上げ当時(2000年)の記事
(注2) SOHOグループの作業標準化のためのガイドライン作成の記事


インタビューを終えて:

 人間としてバランスよく成長する、というのは橋沢さんのことを言うのではないかといつも思っています。初めてお会いしてから15年が経ち、お互いすっかり大人に?なってしまいましたが、少年のような表情を時折される橋沢さんは、いつも、仕事の仲間、ダイビングの仲間、地域活動の仲間を大事にされています。このバランスや配分を守っていこうとする気持ちが、知らず知らずSOHOの方向に駆り立てるのかもしれませんね。これからも後輩たちに色々な示唆をください。

(堀込)

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職業人の在りよう

森 清 労働研究家

 この3月に発行された『在宅就業支援ガイドブック』(東京コロニー・職能開発室)に「『職人』であろう」という拙文を寄稿した。

 その中で「職人とは、恥じない仕事をする人のこと」、その「職人」になるには仕事の技を鍛えないといけないし、それには「生活をしっかり営める者に」なることが先ず大事だと書いた。その自分の文章を改めて読み、これは高揚し過ぎと反省した。

 書いたことが立派過ぎる。間違いではないけれども、そのような人はそう多くいない。職人さんには身勝手な人がいたし、喧嘩っ早い人もいた。それでいていい仕事をする人もいた。生活は自堕落ながら、自分の仕事には集中してそれなりの仕事をする職人さんもいた。そういう人たちの中で、先に挙げた条件にほぼかなう人は、職人頭になれるような人で、数少ない。もっとも、現代社会は平準化社会で、誰にも同じような資質と力を求める。だから、古いタイプの「職人さん」では通用しない。このことは心したい。

 「障害は個性」であるから、障害ワーカーは相当に個性豊かな人たちだということになる。そのことを承知してそれぞれの個性に適合した仕事をしてもらうのが雇用する側の役割であり、それでこそ経営に役立てられるというものだ。先のガイドブックには、職務を分割し、複数の在宅障害ワーカーをネットワークして成果をあげているワークスネット社の事例が紹介されていた。好事例である。ワーカーは振られた職務に力をこめ、さまざまな人と働き合って生きていることを自覚し、幸せを噛みしめ合ってほしい。

 「イイカゲン」と「ヨイカゲン」という言葉がある。「イイカゲン」は自分のことを主にしての行動で、「ヨイカゲン」は成果を受け取ってくれる人のことを思いやりながら素材や機械・器具をうまく扱う働きのことである。いうまでもなく、後者を心掛けたい。そして、働きはじめには「教えたくなる人」、ベテランになれば「気楽に教えてくれる人」になるよう努める。それがいい仕事をする職業人の在りようだと思う。

(2009年6月4日記)

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 7月より当センターで「ライセンス・カフェ」という就労支援などを目的としたPCスキルの獲得支援を行います。 当面は、Microsoft Office Specialist(MOS)のワードとエクセルの資格取得を教材として実施予定です(MOSには受験時に障害者特別措置があります)。

 テキストに沿いながら自習型式で行い、ITサポーターが必要時にサポートします。申し込みは、まず当センターに来所して頂き、受講目的、支援機器等を確認の上、コース選択や学習方法を一緒に計画いたします。

 練習問題と模擬試験の学習を1回3時間以内、随時開始でき、半年間何回でも参加可能です。チャレンジしてみませんか?

(堀込)

●お問い合わせ先
東京都障害者IT地域支援センター
〒162-0052 新宿区戸山3-17-3 (最寄駅:副都心線 西早稲田駅)
電話 03-3208-0471  FAX 03-3208-0472
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 東京コロニーでは、かねてより三菱商事株式会社様から多大なご支援を頂いております。その一つが博物館等での展示会への特別ご招待で、閉館後の館内を貸切り、障害のある方がゆっくり見学できるように配慮していただくものです。今回は、マスコミでも話題となった「阿修羅展」に参加された「es-team(エス・チーム)」のメンバー中川美貴子さんにその様子をレポートしていただきます。

 東京国立博物館で開かれていた「阿修羅展」の展示を拝観しました。鑑賞会は、夕方からのナイトミュージアムスタイルで、独特の雰囲気があり、通常だと人が多くじっくり観られない展示品を、ゆったりと鑑賞することができます。

 今回の展示の見どころは八部衆と十大弟子と、なんと言っても阿修羅像です。阿修羅像の左右の顔を真正面から観ることができるなんて!逃すわけにはいきません。八部衆と十大弟子は、いずれも個性的で迫力があり、色あせていても伝わる作者の情熱、その時代の息吹に心が熱くなりました。

 デザイナーという仕事柄、良く博物館に足を運びますが、このようなバリアフリーな鑑賞会は、より作品に没頭でき、とてもありがたいです。

(es-team 中川美貴子)

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◆東京事務代行株式会社 にて 在宅勤務決定
 M.T さん 疾患 1級
(職業紹介事業 2008年登録者)

M.Tさん
   

◆ITパスポート試験 合格
  A.M さん 両上肢、体幹機能障害 1種1級
(IT技術者在宅養成講座 受講中)

A.Mさん
   

  T.D さん 筋ジストロフィー 1種1級
(IT技術者在宅養成講座 受講中)

T.Dさん
   
◆基本情報技術者試験 合格
  O.A さん 筋ジストロフィー 1種1級
(IT技術者在宅養成講座 受講中)
O.Aさん
   

 



編 集 後 記

 梅雨の季節、ふと最近かたつむりを見ていないなぁと思いました。環境破壊のせいなのか、自分が気づいていないだけなのか…。ちょっと時間が空いたとき、いつも携帯の画面ばかり見ている自分を少し反省しました。

(岩田)

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